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そのBarを訪れたのは、数年ぶりだった。 久しぶりに、いつものオーダーを口にする。 「メーカーズマーク・ブラックトップ」 この一杯は、私の夜を始めるための儀式。 一人きりの、ささやかな乾杯だった。 初めて、このバーボンを飲んだのは22歳の時だった。 バックバーに並んだボトルの中で、ひときわ目を引くボトルネック。 赤や黒、緑の封蝋で封を施された独特のボトルは、 酒のことなんてほとんど知らない若造だった私にとって、 とても魅力的に映った。 メーカーズマーク。 純銀製品には、銀の純度を示したライオンのマークが記されている。 このライオンと共に、イニシャルを刻んだマークが存在する。 このイニシャルは、その銀製品を作った職人のもの。 自らの仕事に絶対の自信を持ち、作品への愛情と誇りを込めて、 職人たちはイニシャルを刻んだ。 このマークを「Make’s Mark」という。 代々、ウィスキー作りに携わってきたサミュエルズ家。 その4代目、ビル・サミュエルズは、ケンタッキー州ロレットを訪れた。 ……自分の理想とするウィスキーを造るため。 彼は豊かな自然に囲まれたその地で、廃虚のような蒸留所を見つける。 蒸留所に流れ込んでいたのは、バーボン・ウィスキー造りに最適とされる、 ライムストーン・スプリングウォーターだった。 地中に分厚く積み重ねられたライムストーン(石灰岩)の層をくぐり抜けた水は、 鉄分を濾過され、カルシウムなどのミネラルを豊富に含む。 カルシウムは、コーンや麦が発酵する際の酸の発生を抑え、 バーボンにより豊かな風味と旨味をもたらすのだ。 ビル・サミュエルズは代々伝わってきたウィスキー作りのレシピすべてを焼き捨て、 最高の原料、最高の水を使い、妥協なき独自の製法をもって理想のウィスキー作りに取りかかった。 時は1953年。 ここに、アメリカで一番小さい蒸留所が産声を上げた。 「ウィスキーは機械ではなく、人の手で少量を丁寧に作るべき」 揺るぎなき信条に支えられ、やがて、彼が理想とするバーボンが完成した。 通常、バーボンはコーンとライ麦、大麦麦芽を使って作り上げる。 しかし、ビル・サミュエルズはライ麦の代わりに冬小麦を使った。 これによって、まろやかな口当たりと心地よい風味が生まれた。 誕生したウィスキーは絹のように滑らかで、ブランデーのように豊かな風味が特徴。 飲み終わった後も、華やかな余韻を楽しむことのできる、 芸術作品にも例えられるような酒となった。 彼は、苦心の末、自らの作り上げたバーボンに、絶対の自信と誇り、 愛情を込めて、この名をつけた。 「Maker's Mark」。 女性職人が1本1本、愛情を込めて施した赤い封蝋。 すべてが手作業で行われるため、そのボトルは世界に一つしかない、 「オンリーワン・ボトル」なのだ。 赤い封蝋に敬意を込めて、人々はこのボトルを「レッドトップ」と呼んだ。 時は流れ、1995年。 メーカーズマーク蒸留所が、日本限定で新たなバーボンを発売した。 つややかな漆黒の封蝋を施された、「ブラックトップ」だった。 父の作った「レッドトップ」を超えたい。 その一心から、現社長、ビル・サミュエルズJrが、 12年の歳月をかけて作り上げた「ブラックトップ」。 「レッドトップ」の味わいに、さらに深みとまろやかさを加えた名品だった。 この他、ビル・サミュエルズJrが親しい人へのプレゼントとして作った「VIPボトル」や、 ケンタッキーダービーを記念して限定製造した「ゴールドトップ」など、 メーカーズマークのメンバーに加入しているBarへ行けば、 さまざまなラインナップを楽しめるようになった。 そのBarを訪れたのは、数年ぶりだった。 久しぶりに、いつものオーダーを口にする。 「メーカーズマーク・ブラックトップ」 この一杯は、私の夜を始めるための儀式。 一人きりの、ささやかな乾杯だった。 しかし、マスターの返事は意外なものだった。 「申し訳ありません、あいにく切らしておりまして……」 「……じゃあ、レッドトップを」 信じられないという思いで頼みなおした私に、マスターは恐縮した顔で続けた。 「4、5年前に製造中止になってしまって、ブラックはもう手に入らないんです」 なんてこった……。 切ない思いで「レッドトップ」に口をつける。 柔らかな味わい。滑らかなのど越し。昔、何度も飲んだ、懐かしい味だった。 しかし、「ブラックトップ」とは明らかに違う。 大好きでたまらなかった初恋の人に数年ぶりに再会したら、既に結婚して、子供もいた。 ちょっと違うかもしれないが、そんな感慨だろうか。 ヒラヒラと舞い散る桜の花びらのように、人生ははかなく、移ろいやすいもの。 永遠に失われてしまった思い出の1ページ、ブラックトップ。 たった一人の乾杯は、もう二度と訪れることのない、寂しさの海に沈んでいく。 さよなら。 そして、ありがとう。 片隅ブログ書きが、心からの敬意を捧ぐ。 メーカーズマーク・公式ホームページ http://www.makersmark.net/ |
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メーカーズマーク 45度 【試飲会イベントその4】
・・・・ご無沙汰しています、酔っ払い管理人です。 ...続きを見る |
目指せ酒仙! 将来の店に置く旨い酒を求め... 2008/05/25 10:19 |
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