猫大好き 笛吹旅人の新・退屈雑記

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help リーダーに追加 RSS メーカーズ・マーク物語 ブラックトップへの限りなき愛情を込めて

<<   作成日時 : 2008/04/07 15:07   >>

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そのBarを訪れたのは、数年ぶりだった。
久しぶりに、いつものオーダーを口にする。
「メーカーズマーク・ブラックトップ」
この一杯は、私の夜を始めるための儀式。
一人きりの、ささやかな乾杯だった。

初めて、このバーボンを飲んだのは22歳の時だった。
バックバーに並んだボトルの中で、ひときわ目を引くボトルネック。
赤や黒、緑の封蝋で封を施された独特のボトルは、
酒のことなんてほとんど知らない若造だった私にとって、
とても魅力的に映った。

メーカーズマーク。
純銀製品には、銀の純度を示したライオンのマークが記されている。
このライオンと共に、イニシャルを刻んだマークが存在する。
このイニシャルは、その銀製品を作った職人のもの。
自らの仕事に絶対の自信を持ち、作品への愛情と誇りを込めて、
職人たちはイニシャルを刻んだ。
このマークを「Make’s Mark」という。

代々、ウィスキー作りに携わってきたサミュエルズ家。
その4代目、ビル・サミュエルズは、ケンタッキー州ロレットを訪れた。
……自分の理想とするウィスキーを造るため。

彼は豊かな自然に囲まれたその地で、廃虚のような蒸留所を見つける。
蒸留所に流れ込んでいたのは、バーボン・ウィスキー造りに最適とされる、
ライムストーン・スプリングウォーターだった。

地中に分厚く積み重ねられたライムストーン(石灰岩)の層をくぐり抜けた水は、
鉄分を濾過され、カルシウムなどのミネラルを豊富に含む。
カルシウムは、コーンや麦が発酵する際の酸の発生を抑え、
バーボンにより豊かな風味と旨味をもたらすのだ。

ビル・サミュエルズは代々伝わってきたウィスキー作りのレシピすべてを焼き捨て、
最高の原料、最高の水を使い、妥協なき独自の製法をもって理想のウィスキー作りに取りかかった。
時は1953年。
ここに、アメリカで一番小さい蒸留所が産声を上げた。

「ウィスキーは機械ではなく、人の手で少量を丁寧に作るべき」
揺るぎなき信条に支えられ、やがて、彼が理想とするバーボンが完成した。
通常、バーボンはコーンとライ麦、大麦麦芽を使って作り上げる。
しかし、ビル・サミュエルズはライ麦の代わりに冬小麦を使った。
これによって、まろやかな口当たりと心地よい風味が生まれた。
誕生したウィスキーは絹のように滑らかで、ブランデーのように豊かな風味が特徴。
飲み終わった後も、華やかな余韻を楽しむことのできる、
芸術作品にも例えられるような酒となった。

彼は、苦心の末、自らの作り上げたバーボンに、絶対の自信と誇り、
愛情を込めて、この名をつけた。
「Maker's Mark」。

女性職人が1本1本、愛情を込めて施した赤い封蝋。
すべてが手作業で行われるため、そのボトルは世界に一つしかない、
「オンリーワン・ボトル」なのだ。
赤い封蝋に敬意を込めて、人々はこのボトルを「レッドトップ」と呼んだ。

時は流れ、1995年。
メーカーズマーク蒸留所が、日本限定で新たなバーボンを発売した。
つややかな漆黒の封蝋を施された、「ブラックトップ」だった。

父の作った「レッドトップ」を超えたい。
その一心から、現社長、ビル・サミュエルズJrが、
12年の歳月をかけて作り上げた「ブラックトップ」。
「レッドトップ」の味わいに、さらに深みとまろやかさを加えた名品だった。

この他、ビル・サミュエルズJrが親しい人へのプレゼントとして作った「VIPボトル」や、
ケンタッキーダービーを記念して限定製造した「ゴールドトップ」など、
メーカーズマークのメンバーに加入しているBarへ行けば、
さまざまなラインナップを楽しめるようになった。

そのBarを訪れたのは、数年ぶりだった。
久しぶりに、いつものオーダーを口にする。
「メーカーズマーク・ブラックトップ」
この一杯は、私の夜を始めるための儀式。
一人きりの、ささやかな乾杯だった。

しかし、マスターの返事は意外なものだった。
「申し訳ありません、あいにく切らしておりまして……」
「……じゃあ、レッドトップを」
信じられないという思いで頼みなおした私に、マスターは恐縮した顔で続けた。

「4、5年前に製造中止になってしまって、ブラックはもう手に入らないんです」

なんてこった……。
切ない思いで「レッドトップ」に口をつける。
柔らかな味わい。滑らかなのど越し。昔、何度も飲んだ、懐かしい味だった。
しかし、「ブラックトップ」とは明らかに違う。

大好きでたまらなかった初恋の人に数年ぶりに再会したら、既に結婚して、子供もいた。
ちょっと違うかもしれないが、そんな感慨だろうか。

ヒラヒラと舞い散る桜の花びらのように、人生ははかなく、移ろいやすいもの。
永遠に失われてしまった思い出の1ページ、ブラックトップ。
たった一人の乾杯は、もう二度と訪れることのない、寂しさの海に沈んでいく。

さよなら。
そして、ありがとう。
片隅ブログ書きが、心からの敬意を捧ぐ。

メーカーズマーク・公式ホームページ
http://www.makersmark.net/

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目指せ酒仙! 将来の店に置く旨い酒を求め...
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